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生涯で負けた合戦は○回だけ!知恵の武将「武田信玄」のルーツを探る

生涯で負けた合戦は2度だけ!知恵の武将「武田信玄」のルーツを探る


画像:太平記英勇伝4「武田大膳大夫晴信入道信玄」(落合芳幾作-東京都立図書館)

屈指の精鋭部隊「赤備え」や「騎馬隊」を率い、数々の戦場で勝利をおさめ、向かうところ敵なしの姿から“甲斐の虎”と恐れられた武田信玄。なんと、生涯において負けた合戦は2度だけ。

情報収集を徹底し、傾向と対策を練ることで可能性を高め、まさに百戦錬磨という言葉が相応しい“戦のプロフェッショナル”でした。また、兵法を学び、知略や戦術に長けていたことでも有名です。

その思考はすでに青年期から備わっていたそうで、 甲陽軍鑑に記されている「貝殻の話」には、まだ若い信玄が武田家に仕える大人たちを堂々たる風格で驚かせたというエピソードが残っています。

そこで今回は、信玄の青年時代にまつわる話をご紹介。戦国の最前線を走り続けた信玄は、どのような青年だったのでしょうか。興味深い逸話を交えながらチェックしていきましょう。

※甲陽軍鑑・・・武田家の軍事記録や出来事を記録した書物

  勝千代から晴信へ


画像:温故堂「甲陽軍鑑」(国立図書館)

甲斐国(山梨県)の守護を任せられていた武田家は源氏の血を受け継ぐ一族で、信玄は武田信虎の次男として躑躅ヶ崎館に生まれ、幼少期の名前は勝千代(または太郎)でした。

1536年、16歳になった勝千代は室町幕府12代将軍の足利義春から「晴」の字を授かり、父の「信」をとって「晴信」へ改名します。21歳で武田家を継ぎ、19代当主となりました。

1559年3月、39歳の晴信は長禅寺の僧侶・岐秀元伯を敬って出家し、そして「徳栄軒信玄」と名乗り、この頃から武田信玄と呼ばれるようになったと言われています。(参考:甲斐国誌)

※守護・・・幕府が築いた武家の役職。地域ごとの守護を決めて政治や軍事の指揮をとらせた

信玄は父親とは真逆のタイプで、信虎は腕っぷしが強く血の気が多い武闘派でしたが、信玄は知識や経験をもとに冷静な判断を下し、効率よく行動する知性派。

“虎”というネーミングからオラオラな感じをイメージしがちですが、実は、とても慎重で優れた知性をもった戦略家タイプの武将だったのです。そのため、信玄は情報収集に重きを置いていました。

「三ツ者」という男女混合の忍者集団をつくって諜報活動をさせ、大名や武家の動向など各地の情報を仕入れ、合戦前には敵方の戦歴や戦い方の傾向からプランを組み立てたと言われています。

生涯において永遠のライバルとなった上杉謙信は真っ向勝負を挑むオラオラ系でしたが、信玄は猪突猛進とは無縁の男。研究や分析といった用意周到な一面が目立ちますね。

  貝殻の話

さて、青年期に話を戻しましょう。信玄には2歳上の定恵院という姉がいましたが、定恵院は18歳で今川義元に嫁ぎ、静岡の駿府で暮らしていました。このとき、信玄は16歳。

ある日、武田家に姉から貝殻が届きます。当時、バラバラの貝殻から2枚を組み合わせてペアをつくる遊び(トランプの真剣衰弱のようなゲーム)が流行っており、そのための貝殻を送ってくれたのです。

ところが、送られてきた貝殻は山盛り2畳分で度を越えた量でした。母親は、「貝おいに使えそうな貝殻を兄弟で選別しておいてね」と信玄に頼みました。

普通なら「無茶だよ」と諦めるほどの難題ですが、山に囲まれて育った信玄は目の前に積まれた貝殻に大興奮。一枚ずつ確認し、ようやく数え終わると3700枚あったそうです。

信玄は武田の家臣たちに「あのさ、この山盛りの貝殻は全部で何枚だと思う?」と聞いて回り、ある者は1万枚、また、ある者は8000枚と答えたり、どれも当てずっぽうの回答ばかり。

すると、信玄は閃きます。「人間は思い込みで判断する傾向がある、これを戦に応用できないか」と。そして、信玄は的外れな答えを並べた家臣たちに言いました。

「兵力が合戦の勝敗を決めると思っていた。しかし、さほど人数は重要でないことに気づいた。いかに3000の兵を1万に見せれるか、大軍と思わせるように動かせるかが指揮官の役目。心得ておくとよい」

つまり、憶測や見た目の印象で判断しやすいという人間の心理を利用し、相手に思い込みを与えて錯覚させれば、はじめから戦況を有利に運べると考えたわけです。

2畳分の貝殻3700枚でさえ1万枚に見えるのだから、上手く兵を動かして攻め込めば2倍や3倍に思わせることもできるはず、と。それを聞いた家臣たちは「なんとも末恐ろしい若殿よ」と感服しました。

参考:甲陽軍鑑-第6

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