画像:江戸之城下町模型(江戸東京博物館)
普段、私たちが何気なく使っている言葉にも歴史が隠されている。現代の言葉は何百年もの月日を重ねて今の日本語に至っているのだ。
たとえば、「おはよう」「こんにちは」「おやすみ」といった挨拶は江戸時代がルーツ。「おはようございます」であれば「朝早くからご苦労さま」という言葉が変化して現在の挨拶用語になっている。
このように言葉には由来や歴史が隠れており、江戸時代から現在まで引き継がれている言葉は300以上あるそうだ。今回は、何気なく耳にする言葉を例にあげて江戸時代との関係を紹介したいと思う。
「ついたち(一日)」の由来
画像:オーソドックスな日めくりカレンダー(高橋書店)
カレンダーで月の始まりに当たる「一日」。これを「ついたち」と読むが、この「ついたち」という言葉は江戸時代に誕生した言葉である。江戸時代では、月が入れ替わることを「月が立つ」と言っていた。
次第に、その言葉は略称されて「月立ち」と言われるようになった。「つきたち」が語源となり「ついたち」と呼ばれるようになった。
また、20日を「はつか」と読むのも江戸時代の名残がある。当時は1ヶ月を3つに分けて前期を「とお」、中期を「はた」、後期に入ると「みそ」と呼んでいた。
それらが語源となって10日を「とおか」、20日を「はつか」と呼ぶようになり、1年の最終日を大晦日と呼ぶのは、「みそ」が語源。
江戸時代には1ヶ月の最終日を「みそ」と呼んでいたが、「三十日(みそか)」とも言っていたのである。大晦日の「大」は1年の最後を表し、「三十日」とは月の最終日を表した言葉ということになる
つまり、「大三十日(おおみそか)」となるわけだ。それが次第に変化して「大晦日」となった。30歳になった人を三十路(みそじ)と言うが、ここにも「みそ」という言葉が隠れていることがわかるだろう。
「折り紙つきの品物です」
優秀な人や優れた品物に対して「折り紙つき」という言葉を使うが、たとえば、「この陶器は折り紙つきなので安くはない」と言ったり、「この饅頭は折り紙つきなので一度食べてみてください」なんて言ったりする。
では、この「折り紙つき」という言葉の意味は何だろうか。
江戸時代に「折り紙」は鶴や飾りつけのために用いるのではなく、大切な要件を伝えるための手紙に使ったり、約束事を交わす契約書に使われたり、刀や美術品の説明書きをするために使われていた。
つまり、大切な時にしか使われていなかったのである。江戸時代の中期に入ると「鑑定書」としても折り紙が使用されるようになり、「折り紙がついたものは確かなもの」として価値を示す気目安になっていた。
そのため、「折り紙がついている商品」には「確かなもの」という意味が込められているのだ。それがいつしか「折り紙つき」という言葉だけが使用されるようになって現在に至る。
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