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信長公記・11巻その4「安土城の大相撲」

堺にて大船の見物

信長公記・11巻その4「安土城の大相撲」
画像:九鬼嘉隆の肖像(常安寺)

10月27日、信長は九鬼嘉隆の大船を見物するために京都を出発し、翌日に若江(東大阪市の旧名)に入った。

29日は早朝に天王寺(大阪市天王寺区)へ着いて佐久間信盛の陣営で休息したのち、鷹狩を行いながら住吉(大阪市住吉区)に向かい、到着すると住吉大社の社家の屋敷で一泊した。

翌日の明け方、信長は近衛前久、細川昭元、一色満信と一緒に湊(大阪府堺市堺区)へ入った。しばらく海岸で待っていると、九鬼の大船が信長の前に姿を現した。

幟(のぼり)や指物(武士が自分の所属や職階などを示すための旗や飾り、または旗指物)、幔幕(式場などに長く張りめぐらす幕)を立て、唐物(中国の様式)で飾り付けられた大船には献上の品々が乗っており、武具を身につけた兵士が力いっぱい大船を漕いでいた。

このとき、堺(大阪市堺市)の町人や僧侶らが信長を一目見るために集まっており、辺りには焼香の匂いが漂っていた。信長は観衆の中を進み、一人で九鬼の大船に乗って船内を見物した。

見物が終わったあと、信長は今井宗久(堺の商人で茶人)の屋敷に足を運んだ。宗久にとって光栄な出来事であり、先祖代々に語り継がれる名誉となった。

茶の湯(茶道)が終わると信長は境を出発し、帰りの道中で津田宗及、紅屋宗陽、道巴の屋敷(いずれも茶人)の屋敷に立ち寄ってから住吉大社に到着した。

九鬼嘉隆を住吉大社の社家の屋敷に呼び、褒美として金20枚と衣服10着、菱喰(カモ科の鳥)が描かれた2段の折箱と千人扶持※を贈った。

※(一人分の1日の食糧を玄米5合(900ミリリットル)で基準にし、一斗五升(27リットル)の玄米が一か月の基準。これの一年分の米または、それに相当する金銭を一人扶持という。つまり、1000人分の食費が千人扶持である)

さらに、白船(鉄甲船)を造った滝川一益にも千人扶持を与え、滝川の家臣である渡辺佐内、犬飼助三、伊藤孫大夫にも金6枚と衣服を与えた。

1578年10月31日(天正6年10月1日)、信長は住吉を出発して道中では安見新七郎の城(交野城と思われる)で休憩し、京都の二条御へ到着した。

翌日、事件が起きた。不在時の留守を任せていた住阿弥が怠けていたということで信長に斬り殺された。さらに、さいという使用人の女性も住阿弥と同様に処刑されてしまった。

越中の制圧

信長公記・11巻その4「安土城の大相撲」
画像:信長三十六功臣像「斎藤利治」の肖像(岐阜市立中央図書館)

11月3日、越中(富山県)太田保の本郷(富山市太田南町)に陣を構えた斎藤新五は、長尾景直(椎名小四郎)と河田長親が立て籠もる今和泉城(富山市今泉)の城下に火を放って攻め寄せた。

利治が火を放ち終わって軍を引き揚げると、敵兵が追尾してきたのである。これを察知した利治は月岡野(富山市上栄周辺)で戦闘態勢に入り、敵軍と一線を交えた(月岡野の戦い)。

織田軍は見事に景直・長親らの兵を撃退し、160を超える敵兵を討ち取ったのだ。勝機と感じた利治は勢いに乗じ、各所を駆け回って越中の土豪たちから人質を取り固め※ていった。

※(人質を差し出させることで服従、または服属の証となる。裏切らないようにする保険)

集めた人質を神保長住に引き渡し、越中を出発して帰還の準備に入った。

一方、11月4日、二条殿では信長が畿内(山城国・摂津国・河内国・大和国・和泉国)と近江(滋賀県)の相撲取りを集めて坪の内(二条殿の敷地にある中庭。殿舎と殿舎の間)で相撲を催し、摂家・清華家(上位の公家)に見物させた。

11月5日は坂本(滋賀県大津市)から安土まで船で帰還し、13日は長光寺(愛知県稲沢市)の山で鷹狩を楽しんだ。その際、美濃の庭子の鷹(信忠が育てた鷹で信長に贈った)が見事に獲物を仕留めたので信長は上機嫌だった。

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