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徳川家康と江戸幕府。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」の意味とは?

鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス

戦国の乱世を生き抜き、関ヶ原・大阪の陣で天下統一を果たした家康。信長が”暴”で秀吉が”知”ならば、家康は「耐」で天下をとった武将である。つまり、我慢の人である。

用心深く、粘り強い慎重な人物と言えるだろう。「滅びる原因は自らの中にある」と、家来や自分に言い聞かせ、用心を怠らなかった家康。その根本にあるものが“我慢”だった。

愛知県の岡崎市で生まれた家康は、6歳のときに織田家に人質として囚われ、そのあと、今川家の人質となり静岡の駿府城で暮らしている。幼少期~青年まで2回も人質生活を送っているのだ。

桶狭間の戦いで信長が今川義元を討ち取ると家康は今川家の人質から解放され故郷の岡崎へ帰るが、すでに愛知では信長が勢いを増して勢力拡大の合戦に明け暮れていた。

岡崎への侵略を防ぐために信長と清須同盟を結び、織田家の同盟国となる。信長の死後、小牧・長久手で秀吉と戦うが、秀吉から出された和解の申し出を承諾し、豊臣家のナンバー2になる。

秀吉の死後、関ケ原の合戦で石田三成を破ると今度は大阪夏の陣で豊臣家を滅ぼし、全国統一を成し遂げた。機が熟すのを待ち、訪れたチャンスを逃さなかった家康。

しかし、家康は黙って耐えていたわけではない。人質生活では兵法や歴史書を隅々まで読み漁り、豊臣家に仕えていた頃は3000人の忍者を抱えて情報収集している。

知識を養い人脈を築き、情報を集めながら”そのとき”を待っていたのだ。チャンスを無駄にしないために、事柄に対応できる力を備えていたと言える。

そして、家康が恐れていたのは「気の緩み」でもあった。油断や不用心を嫌い、危険に対応する備えが足りないことを嫌った。「滅びる原因は自らの中にある」と家臣や自分に言い聞かせていたのは、そのためだ。

そんな家康にも、人生最大のピンチが訪れる。生涯で最大の負け戦となった三方ヶ原の戦い。織田家の同盟国であった家康は、信長包囲網の際に武田信玄に殺されかけている。

あまりにも恐ろしかったので、そのときの心境を肖像画に残し、この画は「顰像(しかみぞう)」と呼ばれている。苦渋の表情=「しかめっ面」という意味。

画像:徳川家康三方ヶ原戦役画像「顰像」

あいつには勝てない・・・、と恐怖に怯えていた矢先、信玄が病死する。信玄の次に恐れられていた長尾景虎(上杉謙信)も病死。万事休す、織田家は危機を乗り越えた。

この出来事に徳川家の家臣たちは喜んでいたが、そんな家来たちに家康は戒めの言葉を残している。

何が、そんなに嬉しいのか。危機が去ったことには感謝しているが、私は信玄の死を素直に喜べない。

信玄という強者が存在していたから我々は緊張し、備えを怠ることなく注意深く過ごしてきた。用心する相手がいなくなった今こそ、これまで以上に気を引き締めなければならない。

鎌倉を滅ぼすのは鎌倉であり、平氏を滅ぼしたのが平氏であったように、もっとも恐ろしい相手は自分の中にある「甘え」である。

油断、贅沢、目先の欲、すべては自分の心が招くことであり、気の緩みによって生まれる。滅びる原因は自らが作り出す油断。滅びる原因は自分の中にあるのだ。

もしかしたら、これは信玄との戦いよりも厳しい試練となる。だから私は信玄の死を素直に喜べない。

 

家康は、緊張や警戒からくる用心深さをもって、つねに慎重な状況判断ができるように気を緩めなかったという。

また、家康は、こんな言葉も残している。

重い荷物を背負い、長い道のりを一歩一歩と確かめながら歩くのが人生。急がず慌てず確かめながら、一歩ずつ歩いていかなければ確実なものは得られない。

思い通りにいかないときは、それが当たり前だと思っていれば不満や苛立ちは起きない。

欲望に支配されそうになったら苦しかった時期を思い出して我慢する。そして、怒りは安全に生きる妨げになるから、耐えることが成功へと導いてくれる。

勝つことばかりを望んで負けた者の辛さや悔しさを知らない者は、いずれ自分に不幸が訪れる。

人生とは自分との戦い。他人を責めることなく自分を責める。何事に対しても求めすぎるのは良くないし、足りないものを補うくらいのほうが好ましい結果を手にすることができるのだ。

 

2月12日は、今から415年前に徳川家康が江戸に幕府を開いた日である。

江戸幕府の到来は、その後の日本を変える重要な出来事となった。挫けそうになったり上手くいかなくて苦しいときは、家康の言葉を思い出してみるのも悪くない。

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