<古事記・神話>日本人なら知っておきたい「アマテラス」と「伊勢神宮」の伝説
古来より日本には800万の神様が存在し、台所、トイレ、風呂、畑、川、海、米粒や水など、あらゆる所に神様が宿っているとされています。800万の神様は互いに共存し、力を合わせて自然界を守っていると伝えられます。
そのなかで最も尊い神と言われるのが「天照大神(アマテラスオオミカミ)」です。アマテラスは太陽を司る神で、天皇の祖神、そして日本(大和)という国を生んだ神様(日本人の大御祖神)として古くから崇められてきました。
そこで今回は、古事記・神話シリーズの第一弾として、天照大神についてお話したいと思います。「アマテラスって何?」と聞かれたら答えられるような、基本的なポイントを確認していきましょう。
アマテラスの誕生と三貴子
画像:右・イザナキ、左・イザナミ(小林永濯・画)
伊耶那岐命(イザナキノミコト)が黄泉国(よもつくに)から逃げ帰ったとき、日向橘の小戸の阿波岐原において身体を水で清め(禊)、左目を洗った際に天照大神(アマテラスオオミカミ)が生まれたと言い伝えられています。
そのとき、鼻を洗った際に素戔男尊(スサノオノミコト)が生まれ、右目を洗った際に生まれたのが月読尊(ツクヨミノミコト)であり、イザナキから誕生した三貴子と呼ばれます。
ちなみにイザナキは男の神様なので、三貴子にとって父親にあたるわけです。神話には三貴子の母親も記されていますが、それがイザナキと深く愛し合った伊耶那美命(イザナミノミコト)という女の神様です。
イザナキは三貴子の誕生を大いに喜び、それぞれに役割を与えました。
・長女のアマテラスは太陽の神として高天原(天界。神々が住む世界)の統治
・長男の ツクヨミは月の神として夜の世界の統治
・末っ子で弟のスサノオは海の神として海原の統治
しかし、末っ子のスサノオは聞き分けの悪い神様だったようで、亡くなった母親に会いたいと泣き叫ぶ毎日を送っていました。それは大人になっても変わらず、母に会わせろ会わせろと駄々をこねて泣き叫ぶ毎日。
手が付けられないと悟ったイザナキは「ならばイザナミのもとへ行くがよい」とスサノオを追放。スサノオは姉のアマテラスに挨拶しようと高天原を訪れるのですが、ここで事件を起こしてしまい、アマテラスを怒らせてしまうのです。
天岩戸神話
画像:春齋年昌・画「岩戸神樂之起顯」
さて、高天原にやって来たスサノオはアマテラスに守られていることを盾にして悪さを繰り返し、暴れまわるスサノオに神々は困り果てていました。
あるとき、スサノオが天斑馬(毛色がまだらな馬)を機織りの小屋に投げ入れ、アマテラスに怪我を負わせてしまいます。アマテラスは怒り悲しみ、スサノオを中津国(人間界)へ追放し、天岩屋(岩の洞窟)に籠もってしまいました。
すると太陽は隠れ、暗闇の世界となり、ついには死者も出て最悪の事態を招いたのです。危機を感じた神々は、あの手この手でアマテラスを説得して天岩屋から出そうと試みましたが失敗。
それでも諦めず、策を練りました。そして、お祭り騒ぎしてアマテラスの興味をひこうと考えます。
天岩屋の前に大きな榊(さかき)を立て、八咫鏡(やたのかがみ。三種の神器の一つ)を吊るし、常世の国(とこよのくに)の長鳴鶏(長く鳴くニワトリ)を鳴かせました。
画像:八咫鏡と同型の鏡とされる国宝・大型内行花文鏡(伊都国歴史博物館)
アマテラスは「何事か」と気にはなりましたが天岩屋から出てきません。次に天宇受賣命(アメノウズメノミコト)が踊り、それを見た神々は歌い笑いながらの大騒ぎ。さすがのアマテラスも一目見ようと顔を覗かせました。
その様子を見たアメノウズメがすぐさま駆け寄り、アマテラスに八咫鏡を差し出し、こう言ったのです。
「尊い神が現れたので大騒ぎしているのです。ご覧ください」と。
するとアマテラスは鏡に映った自分の姿を見て、天岩屋から出てきたと伝わります。再び高天原に光が戻り、平和が訪れました。一方、中津国に追放されたスサノオは出雲(現在の島根)で大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するのですが・・・。
人間界に下ろされたスサノオについては、また次の機会に。