episode3 コミュニケーションにも餅を用いた元就
画像:(清神社)
吉田物語の文中には、元就にまつわる餅の話が次のように記されています。
元就は来客のために、いつでも酒と餅を用意していた。そして、身分に関係なく町民だろうと浪人であっても親しく付き合っていた。そうした者たちが時に元就を訪ねて野菜や鳥、魚など地の土産物を持ってくるのである。
その度に元就は自ら顔を出して喜んで受け取り、さらに餅や酒を振る舞って手厚く「もてなし」たのだ。
もてなす際、元就はこう尋ねる。
「君は上戸(酒飲み)か?それとも下戸(酒が苦手)か?」
客が「酒は好きです」と答えると、
「酒は体を温めてくれるから凍えそうで仕方ないときには役立つものだ。
たとえば、川の中を進軍する場合など体を温めてくれる。
だが、気晴らしのために飲んだり限度を超えて飲むものではない」
そう言って酒を差し出す。
一方、「酒は飲めません」と答える相手には、
「そうか、君も下戸か。私も酒は苦手だ。
酒は飲むと人は気性が荒くなりやすくなるし、余計なことを言ったりする。
酒ほど厄介なものはない。
わしと一緒に餅を食べよう」
そう言って餅を差し出すのである。
返事に応じて相手の望むほうを差し出すわけですが、酒を求める相手に対しては「やんわりと忠告」を促しつつ酒を出し、下戸だと言う相手には「酒は悪いもの」と伝えたうえで餅を出す。コミュニケーションにも餅を用いていた元就なのです。
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