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暗殺5日前に坂本龍馬が書いた手紙に記された「由利公正」とは何者?(前編)

  龍馬が書いた手紙の真意


画像:龍馬暗殺5日前の書状(高知県立高知城歴史博物館 )

龍馬は土佐や薩摩の知人を通して岩倉具視など新政府の幹部に由利を推薦し、福井藩に対しても、「新政府の財政担当に由利を就任させたいから承諾してほしい」と書状で懇願しています。

その書状こそ、暗殺される5日前に龍馬が書いた手紙です。

坂本龍馬が中根雪江に送った書状の現代語訳

先ごろ直接申しあげておきました三岡八郎兄(兄=尊敬の気持ちを込めた特別な呼び方)のご上京、新政府にご出仕の一件は急を要することと思っております。
早急に越前藩のご裁可が下りますよう願い奉ります。三岡兄のご上京が一日先になったならば新国家の財政の安定が一日先になってしまいます。何卒、この一点にご尽力をお願いいたします。

※京都国立博物館「宮川禎一」上席研究員による現代語訳を参考に編集

1867年12月10日に龍馬は暗殺されますが、龍馬の推薦を引き受けた明治政府(新政府)は福井藩に要請。しかし、由利の荒っぽい気性や頑固な性格を懸念した福井藩は素直に応じませんでした。

もし由利がトラブルを起こしたら・・・、そう心配したわけですね。明治政府も引き下がらず、やっとのことで福井藩は由利の出仕(※1)を承諾し、由利は明治政府の徴士(※2)に配属されます。

おそらく龍馬は、福井藩が一つ返事で応じないことを予想していたのかもしれません。だから前もって中根雪江に手紙を送り、由利の出仕を打診したのではないでしょうか。

※1出仕とは・・・役所や公の勤めに就くこと
※2徴士とは・・・各藩や民間から選ばれた明治政府初期の議事官

  五箇条の御誓文


画像:福井城跡(福井市大手3-17-1)

大政奉還の直後、龍馬は福井を訪ねたときに自身が考案した「船中八策(のちの新政府綱領八策)」を見せ、今後の新政府に求められる方針・在り方を由利に語り、「その能力を明治政府で活かしてほしい」と説得したそうです。

船中八策の概要

1. 天皇を主体に政治を行う(大政奉還)
2. 上下両院を設置して議会を開き政治を行う
3. 有能な人材を政治へ登用する
4. 外国との不平等条約を見直して改定する
5. 日本国民の規律・指針となる憲法の制定
6. 海軍の増強
7. 政府直属の軍隊(御親兵)を設置し、天皇・御所を護衛する
8. 金銀の交換レートを変更する

そして、龍馬が暗殺された翌月(1868年1月)、明治政府に出仕します。由利に命じられた最初の仕事は「五箇条の御誓文」の起草(原案づくり)でした。

五箇条の御誓文とは、天皇を中心とした政治の基本・方針を示した誓文(神に誓う宣言書)です。

1868年1月に由利は五箇条の御誓文の原案となる「議事之大意(ぎじのていたいい)」を提出し、それを土佐藩の福岡孝弟が修正し、最終的に木戸孝允(桂小五郎)らが手を加え完成しました。

木戸孝允が中心となって五箇条の御誓文を起草したと思っている人もいますが、原案を作成したのは由利公正です。そして、議事之大意は、龍馬の船中八策と重なる内容も多いです。

あの日、船中八策を手に日本の在り方を語り合った二人。由利は龍馬に新国家の未来を託され、その想いは五箇条の御誓文へと姿を変えたわけです。

また、戊辰戦争が始まると明治政府の資金難を補うために由利は、商人たちに支援を求めて回り20万両(現代に換算すると7億6,000万円)の軍資金を用立てることに成功しています。

当時、新政府軍の指揮官であった西郷隆盛に20万両を届け、明治政府の財政担当として軍資金の不足を打開するという見事な手腕と行動力を発揮しました。

  由利公正が行った経済政策


画像:龍馬暗殺5日前の書状(高知県立高知城歴史博物館 )

前編は、ここまで。由利と龍馬の親交や明治政府に出仕するまでの履歴をチェックしましたが、後編では太政官札や殖産興業など、由利が取り組んだ経済政策と龍馬の手紙に隠された“謎”を解説します。

暗殺5日前に書いた手紙は、龍馬が由利との親交が深かったことを示す以外にも、龍馬の暗殺に関係する“ヒント”が隠されている可能性もあり、その“真意’に迫ってみましょう。

後編は、こちら↓
暗殺5日前に坂本龍馬が書いた手紙に記された「由利公正」とは何者?(後編)

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