人たらしの天才、豊臣秀吉の”褒め上手”に学ぶ「人を動かす」テクニック(後編)
画像:2014常設展「豊臣秀吉~波瀾万丈の生涯」豊富秀吉之木像(大阪城天守閣)
前編では交渉や商談などセールスの場面で役立つテクニックとして、秀吉の「人を動かす」テクニックと「褒め上手」についてお話ししました。
前編はこちら↓
人たらしの天才、豊臣秀吉の”褒め上手”に学ぶ「人を動かす」テクニック(前編)
しかし、秀吉は、ただ人を褒めて喜ばせていたのではありません。しっかりと準備したうえで、なおかつ高度なテクニックを用いて人とコミュニケーションをとっています。
秀吉のコミュニケーション・スキルには大きく分けて4つのテクニックがあり、いずれも現代のビジネスシーンに役立つスキルなので、ぜひ参考にしてみると何かヒントが見つかるかもしれませんね。
スキル1 自分の立場を弱く見せる
画像:PAKUTASO
秀吉は危険な仕事や面倒くさい用事に率先して取り組むことで信長から高い評価を受け、その功績を積み重ね次第に一目置かれる存在となりました。
そして、愛想の良さと褒め上手を止めることなく有力な人脈を築いていきます。上司からは可愛がられ、部下には「お前がいないと俺はダメだ」とモチベーションアップを欠かしませんでした。
すべての根底にあったのは気配りや気遣いといった周囲への配慮。大げさなくらい媚を売ったり、おだてたりして自分の立場を弱く見せながら上手く立ち回っています。
たとえば、どんなに優れたプレゼンテーションをしたとしても、生理的に受け付けない人の話には耳を傾けたくありませんよね。それどころか、ちょっとしたことでも不快に感じたりします。
セールスは「man to man」であることを忘れてはいけません。ちょっとした表情でも感情が相手に伝わってしまいますし、一度ネガティブなイメージをもたれると挽回するのは困難です。
秀吉はポジティブな印象を与えるために自分の立場を弱く見せ、気配りしながら相手を立てるようにコミュニケーションをとっていました。これが自然にできると、人の心を掌握しやすくなるそうです。
スキル2 洞察力と計画力
画像:PAKUTASO
有力な大名と戦うことになった秀吉。敵の兵力は秀吉の兵を遥かに上回ります。そこで彼は、敵方の武将4人に狙いを定めてヘッドハンティングを試みました。
無事に3人の武将をスカウトすることに成功したのですが、もう1人の武将はいくら口説いても返事はNO。そこで秀吉は、スカウトした3人の話を彼にしました。
数日後、秀吉に寝返った3人は味方への裏切り行為が敵方の殿様にバレて処刑されてしまいます。この3人が処刑されたことにより敵方の戦力は大幅にダウン。
秀吉は圧倒的に有利な戦況となり、勝利しました。秀吉の作戦は始めから3人の武将を味方につけることではなく、忠誠心の強い1人の武将を動かすことが狙いだったのです。
あえて寝返りそうな3人の武将に話を持ちかけ、それをエサにしてターゲットの武将1人を動かすことがゴールでした。一見すると卑怯な手段かと思いきや、綿密な計画と結果へ導くシナリオが必要。
さらに、洞察力や観察力など、状況を見極める能力も求められます。「何を」「どのように」「どうすれば」「どうなる」このスキームを計画通りに遂行しなければなりません。
What(何を)
How(どのような)
Means(手段で)
Answer(導き出すか)
そうしたしなりを描くためには洞察力と順序立てて計画する能力が必要になるのです。
そして、何を洞察し、どう計画するかを決めるのが「情報」になります。理論や理屈ではなく情報を精査して計画を立てて、目的に向かって行動する能力が秀吉には備わっていたんですね。
スキル3 イメージをコントロールする
画像:PAKUTASO
秀吉は、ことあるごとに手紙を書いています。近況や心情を伝える時には手紙を書き、連絡事項も人に用件を頼むのではなく自分で手紙で知らせています。
信長は秀吉の手紙を見るたびに「内容が面白い」「状況が把握できる」と絶賛していました。
また、手紙だけではなく対面して話すときにも、相手が話の内容を「理解しやすい」ように「イメージしやすい」ように心がけながら会話しています。
つまり、「伝える能力」が高かったことがわかります。これは、ただ単に説明上手ということではなく、相手のイメージをコントロールできるのが秀吉の特技でした。
・感情を上手に表現している
・状況を把握しやすいように表現を工夫している
・伝えたい情報を整理して解りやすくコンパクトにまとめている
・文中や会話のなかで必ず相手を褒めている
・報告するタイミングが絶妙である(相手が知りたい時を見計らっている)
イメージとは、カラーです。説得力を強めるためには、カラートークでイメージさせることが重要。
とくに交渉や商談においてイメージは大切な要素で、トップ・セールスマンはカラートークによって具体的にイメージさせる能力が高く、イメージで相手の欲求をコントロールしながら自分の望むゴールへと導いています。
話術を用いて説明をしたところで、イメージさせることができなければ相手の意思は動きません。つまり、営業はプレゼンではなく、相手の意思を動かし、自分の望む結果へと相手に行動を起こさせることがゴールなのです。
カラートークで大切なポイントは、
興味・・・「へぇー、そうなんだ」
欲求・・・「で、どうなるの?」
解決・・・「なるほど、そういうことか!」
この3要素を相手の意識に植え付けること。完璧なイメージによって興味をひき、さらにイメージを与えて欲求を発生させ、その欲求を満たす解決策が提案できれば人はアクションを起こします。
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