秀吉は気配りと褒めるがモットー
画像:長浜城(滋賀県長浜市)
この頃の秀吉は「藤吉郎」と名乗っていましたが、一説によると藤原氏を祖先にもつ織田家とお世話になった生駒家の吉乃から一文字づつを拝借し、「藤」と「吉」で藤吉郎にしたとか。
秀吉は合戦で功績を上げると信長から滋賀県の今浜を与えられますが、その時にも信長の「長」の文字を拝借して今浜から「長浜」へと地名を変えています。
気配りに抜かりのなかった秀吉は、相手が喜ぶツボを積極的に刺激して人から気に入られるプロだったと言えるでしょう。こうして、「人たらし」と呼ばれるようになったわけです。
また、この頃の秀吉には人脈がありません。それもそのはず。農民からスタートしたのですから、大名や武士に知り合いがいるはずもなく、自分の力で人脈を広げていくしかなかったのです。
気配りに抜かりのなかった秀吉は「人を褒めること」も上手でした。人を褒めることで人を喜ばし、自分に興味を持たせて親しくなるというのが得意だったそうです。
そうやって次第に後輩ができていくと、秀吉は部下も褒めました。「お前は才能があるから仕事を頼みたい」と褒めてヤル気を出させ、仕事が終わると「やっぱり優秀だな君は」と、また褒めるわけです。
ドラマや時代劇では家来に文句を言うなど皮肉な一面が目立つ秀吉ですが、実は部下とのコミュニケーションを大切にしていたんですね。
その結果、石田三成や加藤清正、福島正則や大谷吉継、黒田長政など能力溢れる人材が秀吉を支え、点が点をを結ぶように人脈は広がり、正々堂々と武士の仲間入りを成し遂げました。
人を褒めると仲良くなれる?
ある心理学者の話によると、喜びという感情は「我慢」と「興奮」にコントロールされているらしく、褒められることで「安心」や「共感」を感じて、その相手に「親近感」を抱くそうです。
交渉や商談で例えるなら、優れた話術があっても感情を刺激しなければ人の意思を動かすことはできず、良い方向へと話を有利に進めるためには親近感が大切になります。
ただし、親近感といっても馴れ馴れしくするわけではなく、相手に親近感を抱かせる(こちらに対して相手が自ら親近感を抱く)ことが重要になってきます。
その点で、秀吉が用いた「褒める」という手段は実に効果的だったのです。たとえば商品のセールスなら、商品を売り込むことがゴールではなく買わせることがゴール。
売り込むだけでは商品説明で終わってしまいますが、相手を自分のフィールドに持ち込めば交渉や商談を有利に進められ、「親近感を抱かせる」ことは距離を縮めるための効果的な手段と言えますね。
褒める以外にも、共感したり警戒心を取り払うことでも親近感を与えやすくなります。秀吉は”媚を売る”くらい大げさに褒めたり、おだてたりして人を喜ばせていたとか。
褒め過ぎも度を越してしまえば特殊なスキルになるのかもしれませんね。ただし、的外れに褒めるのは逆効果。状況や相手の人柄を観察したうえで的確に褒めるのが褒め上手の極意。
そういった意味で秀吉は人が喜ぶツボをわかっていたわけで、相手を自分のフィールドに引き込むのが上手かったので人たらしという印象が強かったのでしょうね。
秀吉は人一倍の努力家だった?
画像:豊臣秀吉之肖像(秀吉清正記念館-中村公園文化プラザ)
ある日、上司の命令で大きな石を動かすよう指示された秀吉は周囲に協力を求めましたが誰も手を貸してはくれず、黙々と一人で作業に取り掛かりました。
1日が経っても2日が経っても石は動きません。それを見兼ねて仕方なく周りの者が協力してくれたおかげで無事に石を動かすことができました。
その時、秀吉は気づいたのです。「始めから頼るのではなく自分が動くことで他人を動かせる」と。秀吉は人が嫌がる仕事や面倒な用事など、どんなことでも率先して取り組みました。
困難が訪れるたびに試行錯誤して考え、たとえば危険な状況でも信長から「敵の領地に城を建てろ」と言われれば、なんとか知恵を振り絞って墨俣一夜城を完成させています。
金ヶ崎の戦い(金ヶ崎の退き口)では、信長の逃げ道を確保するために自ら危険な役回りに立候補し、およそ6千人の敵兵を相手に死を覚悟で任務を成功させました。
大きなハンデを背負っていた秀吉は、自分が周りの人よりも出遅れていることに気づいていたのでしょう。だからこそ、人一倍の努力をして強引にでも功績を挙げたかったのです。
そうやって人が嫌がる仕事に取り組んできた秀吉は、部下に仕事や用事を頼むときは相手の立場になって「褒める」「おだてる」という手段でヤル気をださせていたわけです。
人の意思を動かすのは容易ではありませんが、秀吉のように”ちょっとしたコツ”をつかめば褒め上手になれるのかもしれませんね。ぜひ、見習いたいものです。
秀吉に学ぶ4つのコミュニケーション・スキル
画像:豊臣秀吉之像(有馬温泉)
秀吉は、ただ人を褒めて喜ばせていたのではありません。しっかりと準備したうえで、なおかつ高度なテクニックを用いて人とコミュニケーションをとっています。
秀吉のコミュニケーション・スキルには大きく分けて4つのテクニックがあり、参考になるポイントも多いですよ。後編では秀吉のテクニックをチェックしながら、もっと掘り下げていきましょう。
後編は、こちら↓
人たらしの天才、豊臣秀吉の”褒め上手”に学ぶ「人を動かす」テクニック(後編)
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