保存食を制す者は合戦を制す!戦国時代の兵士たちは戦場でなにを食べていたのか?
画像:川中島合戦まつり(S.R.Gmsucoo93)
合戦が日常茶飯事だった戦国時代。短期決戦もあれば、合戦が長引いて長期決戦になることもある。そんなとき、戦場で兵士たちを悩ませていた問題が「食料(兵糧)」の調達。
”腹が減っては戦ができぬ”という、ことわざもあるくらい戦場で欠かせないのが食料。これは日本に限ったことではない。古代の将軍や司令官も出征になると「兵糧」の問題で頭を抱えていたのである。
とはいえ、戦国時代は物流の手段がなく、食料の保存方法も今のように技術が発達していないので個人で戦場に持ち運ぶしかなかった。万が一、食料が尽きれば撤退ということもあったのだ。
当然、この時代にレトルトや缶詰なんて便利なものはない。かといって重荷になるような食料も避けなければならない。無駄に体力を消耗するし、移動も遅くなってしまう。
では、戦国時代の兵士たちは、戦場で何を食べていたのだろうか。
合戦の定番は「兵糧丸」で栄養補給
その名も「兵糧丸(ひょうろうがん)」。合戦で持ち運ぶ食料として携帯保存食の定番だったが、腰に巻き付けて移動するのが主流。原材料は地域によっても異なるが、基本的には米、そば粉などが主原料。
材料を酒で練り、丸めて、蒸したあとは天日干しにして固める。1日に2~3個ほど食べれば空腹をしのげて体力の維持にもつながり、疲労回復にも役立ったそうだ。
また、干飯を「乾飯(かれい)」と呼ぶ地域もある。様々な原料から作られているので栄養価も高く、そこまで腹は膨れないが少しの量で確実に栄養を補給できた貴重な食料である。
<主な原材料>
黒藤皮・虎肉・餅米・晒米・蕎麦粉・キビ粉・はったい粉・きな粉・葛粉・穀物・豆類・鰹節・にぼし粉・梅干・松の実・ごま・薬草・野草・山菜・野菜・くちなし粉・はじかみ粉などを粉末にして蜂蜜・甘草・焼酎・日本酒・濁酒・ごま油・菜種油・植物油など
「干飯(糒)」もメジャーな保存食
兵糧丸に続き、兵士が戦場に持ち込んだ代表的な食料が「干飯・糒(ほしい)」。炊いた米を乾燥させたもので、見た目はパラパラしているシンプルな携帯保存食。
袋などに詰めて持ち歩くのだが、そのままボリボリ噛んだり水を口に含んでて柔らかくして食べてたりした。持ち運ぶときには5~6合が基本。干飯が入った袋を腰にぶら下げて移動したという。
また、米や玄米を煎った「煎り米(焼き米)」もあり、これは干飯がないときの代用。干飯や煎り米は原料が米なので腹持ちはいいが「胃に悪い」というデメリットがあり、下痢や胃痛になる場合もあった。
縄にした「芋茎」は戦国時代のインスタント食品
里芋の茎(ズイキ)を縄のように編み込み、水に味噌を溶いてもので煮込み、そのあと乾燥させたものが「芋茎(いもがら)」である。縄の代わりに荷物を縛り、戦場では食料になるという優れもの。
食べるときには細かく刻んでお湯で戻すと味噌汁に早変わり。つまり、戦国時代のインスタント味噌汁というわけだ。そのまま口に入れてガムのように噛んでもいいし、意外と人気の兵糧だったそうだ。
とくに寒い冬には体も温まるし、しっかり味も濃いので好む兵士も多かった。しかし、味噌汁として食べる際には湯を沸かす手間があり、その場合は緊急時や移動の最中に手軽に食べれないというのが欠点である。
「焼き味噌」で酵素と塩分を補充
焼いた味噌を丸めて携帯していた。一つの玉が一合の味噌をでつくられ、1個で1日5人分が目安。多量の汗をかく合戦では塩分が欠かせず、焼き味噌も重宝された兵糧である。
焼き味噌は塩分だけでなく発酵食品ならではの酵素の働きも得られるため、新陳代謝を高めたり腸を整える作用もあって必ず用意した武将もいたとか。
焼かずに味噌を持ち運んでも腐ったりカビが生えたりするので焼いてから持ち運んだ。これも湯に溶かして飲めばインスタント味噌汁になるし、そのまま少しずつ食べて塩分補給をしたり、戦国時代を代表する兵糧の一つ。
合戦で「梅干し」は必須だった?
戦国時代の戦場で、塩分補給の携帯保存食といえば「梅干し」である。体内に入るとクエン酸に変わり、疲労回復や血流改善、新陳代謝の向上やミネラルの吸収促進など 万能な食品。
持ち運ぶときには種をとって糸をつけるなど工夫し、梅干しを乾燥させる地域もあったという。当時は保存料もないため、こうした保存食は兵士たちに重宝されていた。
また、梅干しは食べるだけでなく”薬”の役割もあった。そのまま傷口に塗って止血や殺菌したり、解熱や頭痛をやわらげるためにも効果があったのである。さらに、腸を整える働きも期待でき、まさに万能薬。
荷物にならず持ち運びも便利で、腰袋に梅干しを入れるのは常識だったとか。およそ2~3日分が適量とされ、大名や武家では戦に備えて大量の梅干しを作っていたという話もある。
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